2026.02.17
ある行旅死亡人の物語

岐阜の建築設計事務所ツジデザインの辻です。
所長が読んだ本をご紹介。自然科学などのノンフィクションが中心。
ある行旅死亡人の物語 /武田惇志 伊藤亜衣
行旅死亡人-病気や行き倒れ、自殺などで亡くなり、名前や住所など身元が判明せず引き取り人が不明の死者を示す法律用語-
本書は、3000万円という大金とともに孤独死したある女性を、共同通信社の記者がその人生を取材をもとにたどるルポ。
身元を証明するものを一才もたず、保険にも加入しないまま、3400万円という大金を現金で保管したまま。
40年にわたり住んでいたアパートも内縁の夫(?)名義、右手の指を全損。夫らしき男性も、職場さえ虚偽の賃貸契約書。
彼女はいったい何者なのか、どのような経緯があってこのような最期をとげたのか。
警察や探偵もあきらめた身元の捜索、残された印鑑の苗字から舞台は大阪から広島へ広がり、ついに親類をつきとめる…。広島で生まれた彼女は…。
一人の女性が、なぜ故郷を離れ、身を隠すように40年も生きたのか。
身元は判明しても、その理由だけは最後までわからなかった。
親族と関係を断つほどの出来事が何だったのか、
そして彼女が幸せだったのかどうかも、結局はわからない。
けれどそれは、第三者が安易に決めてよいことではないのだと思う。
SNSでは何でも白黒をつけたがるけれど、人の人生はもっと曖昧で、グラデーションに満ちている。
時間の流れの中、人の人生は泡のように消えていく中、この女性の人生は本という形で偶然後世に残ることになる。
結局、人の人生ってどんな意味があったのかそれを決められるのは自分だけなのだなという感覚だけが、静かに心に残る。
















