株式会社ツジデザイン

辻のおはなしTsuji’s Blog

辻のおはなしでは、ツジデザインのプロジェクトの進捗や僕達の価値観にまつわるさまざまなコト、
モノについてとりとめなく書いていく小文です。
また、一般の方にわかりにくい用語の解説や家づくりのあれこれなどの知識も、
わかりやすくまとめていきます。

2019.07.02

老後2000万円 のはなし 第一回 現状の整理

お金のおはなし

老後2000万円

老後までに2000万円貯めろですって。

というわけで、ワイドショーやSNSで話題の 老後2000万円 問題。

金融庁内の調査審議機関である、金融審議会が発表した市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」という文章が発端ですが、たぶん誰も中身読んでないですよね。
ざっと読んでみると、現状の把握から近未来の予測、それに対する民間行政双方への提言となかなかまとまった良い文章でした。
30分ほどで読めるものですから、ぜひ読んでみてください。

当事務所で住宅を考えている世代にはダイレクトに影響する話ですし、SNSやワイドショーでは「2000万円」という数字だけが独り歩きして、ほとんど誰も中身について論じている様子はないので、これから3回にわけて簡単に解説してみましょう。すごくざっくりまとめてあるので、ぜひ原文も読んでください。

 

第一回 現状の整理(高齢社会を取り巻く環境変化)

1人口動態

ここだけポイント!長寿化と、価値観の多様化によって核家族、単身世帯がさらに増加しそうだよ。

ア長寿化

  • 平均寿命は男性81歳、女性87歳まで伸びている。
  • 4人に1人は95歳まで生きる試算。これが人生100年うんたらの部分。

イ単身世帯等の増加

  • 少子高齢化はこれから起きるかもしれない未来ではなく、すでに巻き戻せない確実にくる未来
  • 両親との同居世帯が減り、核家族化が進んだ
  • 価値観の多様化とともに単身化もさらに進むだろう

ウ認知症の人の増加

  • 2012年統計で認知症は462万人
  • 80歳を超えると男性で6人に一人、女性は4人に一人が認知症。85歳以上でさらに倍。
  • 2025年には700万人と予測。
  • 認知症により、金融資産の管理に制限が起こる。
  • 成年後見制度がさらに活用される。

2収入支出の状況

ここだけポイント!日本の老後は年金と退職金でまかなうのが基本だったけど、20年間経済成長していないし、フリーランスに退職金はないよ。

ア平均的収入・支出の状況

  • バブル崩壊以降、ほとんど経済成長していない
  • 収入も伸びていないので、支出も伸びていない。
  • 60代以上の高齢者の支出も2〜3割落ち込んでいる。

イ勤労状況

  • 高齢者が他国にくらべ体力、知力とも衰えが少なく勤労意欲も高い。
  • 価値観の多様化から、フリーランスが増えている。
  • ひとつの企業にとどまらず、スキルを活かしつつ転職を重ねる意識が高まっている。

ウ退職金給付の状況

  • 日本の老後は、年金+退職金をベースに設計されてる前提。
  • 退職金の給付額はピーク時から3〜4割落ち込んでいる。
  • イで述べた、フリーランスには退職金は無い。
  • イで述べた、転職を重ねる層が勤続年数で退職金が決まる企業とマッチしていない。(退職金が減る)

3金融資産の保有状況

ここだけポイント!金融資産はほとんどが高齢者が保有してるよ。2000万円の話はここの章が出処で、95歳まで生きる最大の前提だよ。

  • 65歳時点の平均金融資産保有状況は、夫婦世帯2,252万円、単身男性1,552万円、単身女性1506万円。
  • 「平均値」であって、中央値ではないことに注目。
  • 収入と支出の差額が約5万円。もし95歳まで30年生きると約5万円×12ヶ月×30年=2000万円くらい不足。←2000万円の根拠
  • ちなみに米国は75歳以上の金融資産がこの20年で3倍になってる。

4金融環境に対する意識

ここだけポイント!お金のことは不安だが、金融にたいする知識は無い人が大半。

  • 老後に対する不安の内容は、お金に関する不安がトップ
  • 解消するには、「長く働く」か、「若いうちから資産形成」もしくはその両方。
  • 年金以外の資産で、証券投資を挙げた割合は2割以下で、実際に投資しているのはさらに低い割合。
  • 国民の金融に対する知識がない。
  • 銀行や証券会社側も顧客を発掘できていない。

 

まとめ

以上が、金融審議会市場ワーキンググループの「高齢社会における資産形成・管理」報告書の第一章、現状整理の内容です。
ご覧の通り、どこにも年金制度崩壊などとは書かれていませんし、老後に2000万円必要になるという話も、あくまで予測の一例であることがわかると思います。

第一章では、現状の把握をまとめ、次の第二章は個々人と金融サービス提供側が現状をどう把握すべきかがまとめられています。
次回は、金融サービス側への提言は端折って、個々人の部分のみをクローズアップして、まとめてみます。

ワイドショーやSNSでセンセーショナルな見出しに踊らされ、怒りを吐き出すだけでは何も解決しません。そもそも、我々は与えられたカードで勝負するしかないですし、カードの組み合わせ次第では充分勝負ができるはずです。
唾棄すべきは、嘘をつくことではありません。真実の一部のみを繰り返し繰り返し唱えることです。何百年も前から同じ手は使われてきましたが、いまでも実に有効です。今回だと「老後2000万円」というキーワード。
この駄文が、一人でも原文にたどりつく一助になれば幸いです。

第二回 基本的な視点及び考え方

第三回 考えられる対応

ツジデザイン一級建築士事務所

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