2017.03.02
推敲を重ねるように
住宅を設計することは、小説を書く行為に似ている。と、思う。
アタマのなかには、明確にその立ち姿が見えているのに、それを第三者に伝えるためには、建築家は図面に、小説家は文章に落とし込む。
原稿用紙に文字を置いて、あるいは図面にプランを落とし込むと、アタマに見えていたものが二次元に変換される。
その二次元に落とし込まれた情報を自分自身の目で見て、またアタマの中で立体に変換する。ふと本当にこれで良いのかと立ち止まり、推敲を重ねる。
そういえば、小説家の開高健の原稿は推敲跡が少なく綺麗な原稿だったという。莫大な読書量に裏打ちされた語彙力で、読むものを圧倒させる輝ける闇も、開高のアタマの中で推敲を重ねたうえで紙面にインクを置いていくスタイルだったのか。
そんな文才スタイルと自分を重ねるのはおこがましいけれど、悶々と考え続ける中、一筋の光を見つけたときの快感もまた忘れがたく、さらにそれが実際に形になる幸福は何物にも代え難い。
だから今日も、推敲を重ねる。