株式会社ツジデザイン

辻のおはなしTsuji’s Blog

辻のおはなしでは、ツジデザインのプロジェクトの進捗や僕達の価値観にまつわるさまざまなコト、
モノについてとりとめなく書いていく小文です。
また、一般の方にわかりにくい用語の解説や家づくりのあれこれなどの知識も、
わかりやすくまとめていきます。

2017.12.29

本のこととか2017

映画とか,本とか

2017年もあとわずか、今年も読んだ本や映画のなかで、特に印象に残ったものをまとめてご紹介しようと思います。
趣味全開なので、あまりお役には立ちませんが。昨年のまとめはこちらで。

■エッセイ
あるノルウェイの大工の日記/オーレ・トシュテンセン
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ノルウェイで工務店を営む著者が、ある夫婦から依頼を請けた屋根裏部屋の改装を綴ったエッセイ。
日本だと建築家が工事を担当する工務店を探してくることが多いが、ここではクライアント自身が施工者を探してきて建築家と橋渡しをしているらしい。そして、建築家は現場にこない。ちょっとマテ。
現場を見ずに描かれた図面を元に、誠実に工事を進めようとする著者、工務店の経営者としてときには建築家や施主と駆け引きをする著者、どちらの側面も垣間見え興味深い。
日本円にして2000万円程度の建築工事としては小さなものだが、個人経営の工務店としては生き死にがかかっているのだ。
建築用語も監修者がついているので、致命的な間違いは見受けられない。良質のエッセイでした。

■自然化学
日本の土/山野井徹

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日本の平野部に広く分布するにもかかわらず、これまでほとんど顧みられることなく、単に「火山灰性の土」としてきたクロボク土。筆者はこれに疑問をいだき、研究を進める。「クロボク土は火山性である」根拠が戦前の著名な研究者による一文を盲目的に継続してきたこと、日本の地学が表層土下の地盤に集中し、その上の表土をほとんど顧みられることがないこと、様々な要因から研究は進んでいない。
実際にクロボク土の露頭を訪ねあるくうち、その名の通り黒っぽい色をしたクロボク土に炭化したヒエ、アワ、そばなどの穀物花粉が多く含まれること、今でも広く行われる野焼き文化から、縄文文化に行き当たる。
数千年続いた野焼きの結果、分厚いクロボク土の表土層になったのでは‥と筆者は唱える。どうも学会でもこの説には賛否があるようで、今はまだ「説」にすぎないがこれまでほとんど無視されてきた表土に光があたったことは興味深い。

■社会
コンテナ物語/マルク・レビンソン
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物流イノベーションの成功譚。
わずか一台のトラックからはじまった運送会社を経営するマルコム・マクリーンは、トラックの荷台だけを切り離して船で運ぶことを思いつく。
とりあえず規制から入る当局、仕事を失うことを恐れる港の沖仲仕組合の抵抗。それでも安く遠くに製品を運びたいニーズはそれらの障害をはねのける。
「コンテナなど、一時のブームだ。すぐに廃れる」と港のコンテナ化を拒否した港、コンテナリゼーションの到来をいち早く察知し一台コンテナ埠頭に変貌をとげたシンガポール、横浜の明暗。
世界はぜんぶつながっているだなと実感。

 

■建築
南極建築
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また南極です。すみません。そういえば、メディアコスモスで書評を書いたのも南極本でした。何者だ俺は。
南極で観測等を行う基地。その建築物にスポットを当てたビジュアル重視の本書。
緻密ながらどこか柔らかいタッチのモリナガ・ヨウ氏のイラストに解説を重ね、ほぼフルカラーの豪華な仕様。
最初期プレファブ建築で建築された越冬基地はこの本にもあるようにヒノキのフレームに断熱材を充填し合板で挟み込んだプレファブ造。これは建築技術者ではない越冬隊員でも建設可能なよう当時の建築学会の叡智を結集した日本初のプレファブ。通路は荷物の空き箱に水をかけて凍らせて作ったトンネルというのもおもしろい。
パネルの本物は名古屋市科学館にも展示してあるのでぜひ。

■旅
ホビージャパンNEXT

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模型雑誌ホビージャパンの別冊。
「プラモデルを通して世界を旅する雑誌」のコピーが最高。創刊号はロシア、第二号はイギリスということで、各地を取材しつつ各国軍の過去から現在までを俯瞰できる。
WW2当時から、現在まで変化を続ける世界情勢。ソビエトからロシアへ変わってもロシア人は変わらない。またWW2で大きく国力を落とし世界の盟主から脱落したイギリスも歴史の分厚さだけでもお腹いっぱいになれる。
戦車大国ロシアの戦後T-44から連なる、ほとんど同じじゃないの!なT-72,T-80,T-90やそのサブタイプ、一昨年のパレードで出現し西側に衝撃を与えたT-14プラットフォームまでの解説、イギリスはスピットファイアのマーリン・エンジン、グリフォンエンジン、aウイングbウイングcウイングに各サブタイプで複雑な形式をわかりやすく解説。サメっぽいとどこかで話題のMk-IV Maleの作例も。
しかし工業大国の産業遺構に対する保護姿勢には本当に感服します。

■映像
ダンケルク
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ブレードランナー2049かダンケルクか。迷ったけど、上記の英国特集とからめてダンケルク!
第二次世界大戦初期、ドイツの電撃作戦であっさりマジノラインを突破され敗退を余儀なくされた英仏連合。包囲の輪は徐々に狭まりダンケルク港に追い詰められていった。首相チャーチルは自国軍を救うため、艦艇をダンケルクに派遣して救助するよう命じるも、きたるべき本土決戦に向けて艦艇も航空機も温存していた。遅々として来ない救助、空から襲いかかるJu-87の急降下爆撃、時折わずかにしかこない王室空軍機。史上稀に見る撤退戦であるダイナモ作戦の息苦しさを、なんの状況説明もなくぶんなげたクリストファー・ノーラン。ストーリーなんか必要ない!とばかりにただただその場にいるかのように息苦しい映画でした。最高。
あと、スピットファイアの美しさ。初期マーリンエンジン搭載タイプは機首のラインがたまらない。スピットファイアが主役。間違いない。
リドリー・スコットがこの後につながるバトル・オブ・ブリテンの撮影に入っているそうなので、そちらも楽しみ。

 

というわけで、今年もとっちらかった脈絡のないラインナップとなりました。
来年はどんな本に出会えるかな。
それでは、みなさま良いお年を!

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