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辻のおはなしTsuji’s Blog

辻のおはなしでは、ツジデザインのプロジェクトの進捗や僕達の価値観にまつわるさまざまなコト、
モノについてとりとめなく書いていく小文です。
また、一般の方にわかりにくい用語の解説や家づくりのあれこれなどの知識も、
わかりやすくまとめていきます。

2019.12.02

暴力と不平等の人類史

本とか

暴力と不平等の人類史

暴力と不平等の人類史 /ウォルター・シャイデル

地球上で最も裕福な62人の資産と、全人類の貧しい方から35億人分を合計した資産がほぼ等しい。(2015年)
上位1%以下の人がほとんどを得る不平等に関する書物は多くあるが、平等化に関するメカニズムを記したものは少ない。
本書は、過去人類が経験した大規模な平等化を起こした事象を4つにカテゴライズし解説する。

第一に戦争。近代の機会化された世界大戦は過去類を見ないほどの災禍をもたらすと共に、大幅な平等化ももたらした。特にこの章では太平洋戦争後の日本で財閥解体からインフレーションによる資産の雲散霧消をとりあげる。
前近代以前の戦争では、ここまでの平等化が起こらなかったことも解説。

第二に革命。ロシアや中国での革命も、それまで支配層にあった人々を無に返し平等をもたらした。
翻って、中世欧州、中国、日本などでたびたび起こった農民らによる反乱はわずかな平等しかもたらさず、悲劇的な結末に終わることがほとんどだったことを紹介。

第三に崩壊。中世中国や西ローマ帝国の国家崩壊が、それまでの支配者層を一層し平等化をもたらした。
現代では国家の形が崩壊し事実上の無政府状態となったソマリアをとりあげ、平等化の効果と持続性を語る。

第四に疫病。中世欧州でパンデミックを引き起こした黒死病。都市によっては住民の40%を死に至らしめた災禍 は主に貧困者がその渦に飲み込まれた。しかし、その結果労働力の価値が大幅に高まり結果として平等化の効果をもたらす。
ペスト以降のスペイン風邪やたびたび起こった飢饉の結果として、平等化がなされたかも考察する。

最後に不平等を解消する手立てが破滅的暴力によるものであるなら、平和的平等を成し遂げる装置はどこかを論じる。
民主主義、経済発展、教育、それぞれが戦後秩序でどのように平等化に寄与したのか、またはしなかったのか。
そして、上記の4つの騎士「戦争」「革命」「崩壊」「疫病」をほぼ克服した人類は、将来にわたりどう不平等に立ち向かうのか。

著者も自身で認めるとおり、暗鬱とした内容になっている本書。
現代日本は人類史的に見れば過去最高に平等化された世界だろうなという感覚はあるが、それが破滅的戦争による平等化が成したことだという自覚は全くなかった。それでも格差は広がりつつあって、あの破滅でもたった100年かそこらしか平等化できないのかという絶望も感じる。

格差社会。ざっと俯瞰して現在の人類の立ち位置を確認するのに良書。
めっちゃ骨太で読むのにエネルギー必要ですけど…。

 

 

愛知、岐阜、三重で建築設計監理 ツジデザイン一級建築士事務所

 

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