2019.08.28
天冥の標 完結
小川一水による、長編SF小説シリーズ。天冥の標。
第一巻が2009年刊行とのことですから、完結まで10年、計17冊の大叙事詩となりました。
2015年のパラオ。突如世界的パンデミックを起こした致死性の伝染病、冥王斑。奇跡的に生き延びた保菌者達はしかし、未だ感染力を残しているため1箇所に集められ管理され、差別を受ける。
この奇病を主軸に現代から太陽系辺縁まで開拓の進んだ人類大繁栄の時代から、とある因果から人口を大きく減らした人類黄昏の時代まで800余年を書ききる。
各巻ほとんど別の小説と言っていいほど、ストーリーに繋がりはないためどこから読んでもそれなりに楽しめるように構成されているが、読み進めるにつれておぼろげながら見えてくる冥王斑の正体、開拓星での黄昏に至る因果にもう、ワクワクするしかない。
そしてこれこそSFの醍醐味と言える最終巻、双子座μ星系での天文スケールの艦隊戦からの…。
全17冊でしかも一冊一冊もそこそこ分厚い、読むにも大変なエネルギーのいる作品。
作者の気力と怨念さえ感じるこの天冥の標。日本産SFの標となったと思います。読んで!大変だけど。