2023.03.28
住宅の 断熱等性能等級
岐阜の建築設計事務所ツジデザインの辻です。
住宅の 断熱等性能等級 の話。
1分で読めるようにまとめると
断熱性能を上げると寒くないし、地球環境にもいいよ。
断熱性能等級 は1から7まであって、7が最高等級だよ。
等級4は当然クリアしたほうがいいし、コストによっては等級5も取るべき。
ビルダーさんや設計事務所にはUa値は?と聞いてみましょう。
窓を小さくすることで数値だけをクリアするような設計には注意。
等級6以上になるとかなりコストアップするので、バランスをみながら挑戦も。
断熱だけではなくて、消費するエネルギーを少なくすることも大切だよ。
目次
- なんで断熱?
- 断熱等性能等級 ってなに?
- Ua値とηAc値
- 一次エネルギー消費(BEI)
- 建築士は省エネ性能を説明する「義務」がある
- 最高性能が一番良い?
- まとめ
1.なんで断熱?
「断熱」ってどういう意味でしょうか。文字をそのまま読み取ると熱を断つ。
住宅においての断熱とは、ひと言で言えば「寒くない」と言い換えてもいいかもしれません。
従来の日本の住宅は、部屋の中で灯油ファンヒーターを使うなどして暖をとってきました。
ところが多くは無断熱で発生したエネルギーはそのほとんどが窓や壁から逃げてしまい、常に暖房が欠かせず暖房した部屋のみの温度を保つような状態でした。
住宅の断熱性能を上げることで、熱が逃げにくくし暖房や冷房の効率を飛躍的に上げることができます。
2. 断熱等性能等級 ってなに?
住宅の品質確保の促進等に関する法律。いわゆる「住宅性能表示制度」において、省エネルギー性能の基準として、断熱の性能と消費エネルギーをレベルに応じて評価するための基準が「 断熱等性能等級 」です。
2022年10月から、等級6等級7のふたつが新設され、等級1から7までの7段階の評価になりました。
7が最高等級となります。
従来は等級4が最高グレードでしたから、そうとうに嵩上げされたことになります。
2025年以降は等級4以上が義務化されます。
3.Ua値とηAc値
断熱等性能等級 は、日本の国土を気候の条件に合わせて1から8の地域にわけそれぞれの実情にあわせて数値が設定されています。
複雑になるため、東海地方を含む比較的温暖な6地域をもとに具体的にどういった性能が求めらてれいるかを解説します。
6地域の 断熱等性能等級 では、今後多くの住宅が目指すべき等級5の場合、Ua値が0.6以下、ηAc値が2.8以下と設定されています。
Ua値=外皮平均熱貫流率W/mK
どれだけ熱が逃げやすいかの数字です。数字が小さい方がより高性能。
ηAc値
窓や壁からどれだけ熱が建物の中にはいってくるかの指標。数字が小さい方がより高性能。
Ua値は冬、ηAc値は夏。数字が小さい方が強い!
ちょっと雑ですが、おおまかにはそう理解してよいでしょう。
4.一次エネルギー消費(BEI)
断熱の性能Ua値に加え、もうひとつの指標になるのが、一次エネルギー消費(BEI)
簡単にいえば、こちらは住宅で使うエネルギー。照明やお湯、冷暖房などをどの程度使うかの目安です。
高効率給湯器や、LED照明など省エネ性能が高い機器を利用する必要があります。
5.建築士は省エネ性能を説明する「義務」がある
では、自分の建てた、あるいは建てようとしている住宅がどれくらいの性能を持っているのでしょう。
実は、建築士には建主に対してその住宅がどれくらいの省エネ性能なのか説明することが、法律で義務つけられています。
ただし、建主が「説明を求めない」書面にサインすれば免除されるため、抜け道となっています。
今一度省エネ性能の説明がなされていたか、きちんと確認してみましょう。
Ua値やηAc値を聞いてみるのも良いでしょう。
6.最高性能が一番良い?
つまり最高グレードの断熱等性能等級7が最高!なのは確かですが、当然コストも上がります。
等級5以上の求められる性能を見てみましょう。
- 等級5 Ua値が0.6 ηAc値2.8
- 等級6 Ua値が0.46 ηAc値2.8
- 等級7 Ua値が0.26 ηAc値2.8
見ての通り、実はηAc値は2.8から変化がありません。これは実質熱を遮るには庇を長くするなどできることが限られるうえ、冬は日射を取得したいという相反する性質をもつためです。
反面、Ua値は0.6から0.46、0.26と大きく強化されています。
実際の住宅に当てはめると、Ua値0.5くらいまではコストアップはそれほどではありません。
事実、当社設計の住宅も近年の設計では0.5程度を目指しています。
等級6を超えると、窓などのグレードに加え、断熱などもコストアップになってきます。
面積や間取り、土地の方位など計算条件は複雑なので一概には言えませんが、コストとのバランスを見て進めるのが良いでしょう。
実は、簡単に断熱性能を上げる方法もあります。
外壁、屋根の面積を最小限にして、熱損失の大きい開口部を最低限とする。
簡単にいえば、正方形に近い間取りで総2階、窓をできるだけ小さくする。
そうした設計にすれば、数字のうえでは簡単に断熱性能をあげることができます。
はたしてそれが、気持ちの良い住宅になるかは別のお話ですが。
7.まとめ
以上、断熱等性能等級 の説明でした。
このように、住宅の省エネ性能は大きく変化してきています。
今回は断熱のみにまとを絞りましたが、エネルギーを使う機器類、照明やエアコンなどの一次消費エネルギーも大切です。
これから家づくりを目指す方は、コストバランスを見て性能を決めていくのがいいでしょう。
おおむね、等級5程度が最もコストバランスが良いように考えます。さらにコストがかけられるのであれば、等級6や7を狙っていくのも十分選択肢です。
ツジデザイン一級建築士事務所では、標準設計で概ねUa値0.5程度を目指しています。
全棟で建物の外皮計算(壁や窓からどれくらいの熱が逃げていくか、または日射によって入ってくるかを計算)を行なっていますので、住宅をお考えの際はぜひご相談ください。