2022.09.16
映画を早送りで観る人たち
岐阜の建築設計事務所ツジデザインの辻です。
映画を早送りで観る人たち / 稲田豊史著
最初に。「Z世代」のように安易なカテゴライズには賛同しません。
早送りする人たち
映画やアニメを倍速視聴する人が増えているという。
といいつつ、自分もYouTubeのノウハウ系やセミナー動画は1.5倍速で見るし、倍速でないにしても作業中にろくに画面を見ずBGMがわりに映画を流すこともある。
本書はそうした現象を分類、分析し、時代背景と共に論じている。
セリフで全部説明してほしい人たち
アニメ鬼滅の刃を例に、過度なまでの状況や登場人物の心理をセリフで説明する作品が増えたという。
制作側にも難解な作品を作ることで視聴者が離れていくのでは無いかという恐れもあるのではと著者は見立てる。
そうだろうか?もちろんそうした傾向はあるかもしれないが、「君の名は」などはSFに不慣れな人には難解だっただろうけどヒットしたし、かなりの行間をよまなければいけなかった「この世界の片隅に」もきちんと評価された。
失敗したくない人たち
LINEやSNSの普及で、皆が見ているものを見ていないといけないという強調圧力があるのでは?旬のうちにさわりだけ触れておけば、仲間の話題についていけると著者は論ずる。
そして、圧倒的に映像の増えた現在では、なによりタイムパフォーマンスが重視される。
オンリーワンの呪縛。「何者」かになりたい若者は、オタクになるためのリソースを注ぐのはタイパが悪いと切り捨てる。オタクにもなりきれないがため「推し」と言い換えていると評価。
「おすすめの作品を教えて」は要はオタクになるために必要な膨大なインプットをすっとばす行為で、要はクソ作品をつかまされて失敗したくないのだという。
好きなものを貶されたく無い
なろう系の無敵感、ハーレム物の理由のないモテを不快なものや泥臭い努力は見たくない、「見たいものだけを見たい」からと論ずる。
これもそうだろうか?これも、ハーレムものはすでに90年代から存在したし、俺最強系もコータローまかり通るはじめ枚挙にいとまがない。
鑑賞から消費へ、インターネット時代にタイムパフォーマンスやアルゴリズムによる見たい物だけを見せる手法はこれからますまず増えるのは間違いないと思う。
すでに普通に生活していたら、消費できない膨大なコンテンツが溢れている。
でも、そもそも全部見る必要なんてないのだ。もとより、「好きなものを好きなだけ」これで十分だと思うのだけどなぁ。
というレジュメでした。
ネトフリ、ディズニー+独占配信許すまじなあなたへの一冊。