2019.12.30
本のこととか2019
元号が平成から令和に変わり最初の1年が暮れていきます。
皆様、今年はどんな1年でしたか?今年も少ないながら、いろいろな本との出会いがありました。
例年通り今年最後の投稿は今年読んだ本から特に感慨深かったものをいくつかご紹介したいと思います。
■建築
2019年は久しぶりに金沢に行って、谷口建築を浴びてきましたので。 全編モノクロの作品集。純粋に形と影を追えるモノクロ写真は、建築作品集に向いているのでしょうね。 赤坂迎賓館はもちろん、明治村についても言及。 令和をお祝いしたあなたへの一冊。
■歴史
不平等。人類発生直後から、このやっかいな敵は人類を苦しめてきた。また、平和な時代が永く続けば続くほど不平等に拍車がかかることも必然のようだ。
歴史上、不平等が解消されるには4つの「暴力」がきっかけとなる。
「戦争」「革命」「崩壊」そして「疫病」。本書はその4つの圧倒的な暴力がいかにして人類に平等をもたらしたのかを解き明かす。
まさに、我々現代人も破滅的な世界大戦から75年。破滅的な平等を果たしたあの戦争から、100年も経たずまた不平等の影が忍び寄る。
辞書か!と思うほど分厚い骨太の一冊。こたつとみかんのお供にどうぞ。
■科学
人が、組織が、国家が。失敗を犯した時に、どう反応するのか、反応してしまうのか、そしてそこから学ぶには。
15〜18世紀の停滞の世紀を経て、ここ3世紀ほどで人類は飛躍的に進歩を遂げた。星の数ほどの失敗から人類学び進歩を遂げたメカニズムを解き明かす本書。
「失敗は災厄ではない」
どこまで対策しても失敗は発生するが、それでも一歩一歩進んでいく。
年末の大掃除で、今年失敗した買い物に埋もれてるあなたへの一冊。
■社会
今年大ヒットした1冊。あちこちでレビューされているので、選書するか迷いましたが、やはり抜群に面白かったので。
問1:世界の1歳児のうちなんらかの予防接種を受けられる状況にいる子供はどれくらいいるか? A20% B50% C80%
問2:世界で日常的に電気を利用できる人は全人類のうちどれくらいいるか? A20% B50% C80%
上記の質問は、著者があちこちの国際会議などで必ずとりあげる鉄板ネタ。会議に出席するような知識層が1/3しか正答しないという。
さまざまなネガティブな思い込みが、世界の真の姿を覆い隠す。
上記の「失敗の科学」と併せて読むとあちこちの内容がリンクしていて、より理解が深まるかも。
チコちゃんにボーッと生きてんじゃないと言われがちなあなたへの一冊。
■小説
天冥の標 / 小川一水
小川一水による、長編SF小説シリーズ。天冥の標。
第一巻が2009年刊行とのことですから、完結まで10年、計17冊の大叙事詩となりました。
2015年のパラオ。突如世界的パンデミックを起こした致死性の伝染病、冥王斑。奇跡的に生き延びた保菌者達はしかし、未だ感染力を残しているため1箇所に集められ管理され、差別を受ける。
この奇病を主軸に現代から太陽系辺縁まで開拓の進んだ人類大繁栄の時代から、とある因果から人口を大きく減らした人類黄昏の時代まで800余年を書ききる。
読み進めるにつれておぼろげながら見えてくる冥王斑の正体、開拓星での黄昏に至る因果にもう、ワクワクするしかない。
そしてこれこそSFの醍醐味と言える最終巻、双子座μ星系での天文スケールの艦隊戦からの…。
全17冊でしかも一冊一冊もそこそこ分厚い、読むにも大変なエネルギーのいる作品。
ベテルギウス生きてるうちに爆発しねーかなとオリオンの右肩を眺めるあなたへの一冊(?)
■宗教
ぼくたちが聖書について知りたかったこと / 池澤夏樹
文学としての聖書の成り立ち。「聖書」とはなんなのか、「ユダヤ人」とは誰なのか。宗教にも聖書にもまったく興味のない僕は、なにか絶対普遍な原典をひたすら2000年書き写してきたものだと思いこんでいた。細切れのエピソードや伝説の編纂、古代語から現代まで重ねられた翻訳による変容、時代ごとの権力者による恣意的な改ざん、様々なものがよりあつまってだんだんと形作られていく様は、なるほどたしかに文学だ。
著者編の日本文学全集「古事記」も併せて読みたい。神話の成り立ちとの類似性の片鱗を感じる。
原作未読は許せない派のFGO廃課金のあなたへの一冊。
■映画
高校生のマイルスは地下で蜘蛛に噛まれ…とお約束から始まるいつものスパイダーマン。かと思いきや…。
とにかく、こんな映像見たことない。
トゥーンレンダリングされたキャラクター達の高速バトルは、これまで日本が得意だったものを全部つめこんで数段高いレベルでやられてしまった。
最近ちょっとスピード感足りてないなと感じるあなたへの一本。
今年はちょっと読んだ本のジャンルが偏りすぎました。小説系をほとんど読まず、建築も実用書中心に。
来年はもうちょっとバランス良く読みたいですね。
来年はどんな本に出会えるかな。
それでは、みなさま良いお年を!